□ユビキタスコンピューティングの行く先/2003.2.3/植松健一

『ユビキタス』と言う言葉を御存じでしょうか?
今やこの言葉自体が『ユビキタス』状態なのですが、意味は『どこにでもある・遍在する』というラテン語です。書店に行けば雑誌の表紙に刷り込まれ、電車に乗ればITジョブ転職何たらフェアのつり広告にもその言葉は見つけられるでしょう。今となっては何だったんだろうという感のある森内閣が提唱したIT革命の『IT』と言う言葉とどことなく同じ運命を辿りそうな気がするこの言葉。じつは僕らの生活を一変させる可能性のある概念なのです。
ユビキタスと言うのですから、どこにでも存在しなければなりません。私達の一番身近なテ゛バイスをあげるとすれば、携帯電話でしょうか?その携帯のほとんどに使われている技術『TRON』-The Real‐time Operating system Nucleus」がユビキタスコンピューティングの要であります。このTRONという技術は使う時にだけ送電し、メモリやCPUを動かし、様々な処理を行うもので、よって、電源装置も、CPUもメモリも従来の物にくらべて遥かに小型化できる点が優れています。しかもオープンア-キテクチャで誰にでも開発できることから世界中で開発、改良が行われ、CPUは1センチ以下、メモリは既に1ミリ以下。驚愕の事実です。
さて、小さくなれば使い方も変わるわけで、例えば紙にメモリを埋め込めば、文章の偽造はなくなり、いちいち書類にハンコをつくことも無くなるかもしれません。でもそんなのは序の口で、食品のパッケージに埋め込めば賞味期限だけでなく生産者や加工ルート、さらに言えばその素材を使った料理レシピまでとりだすことが可能になります。例えば、その読み取り機械が携帯についたらどうでしょうか?スーパーにいき、パッケージを選び、携帯にかざすと値段や賞味期限、生産者の声まで聞けるかもしれません。
そうして買ってきたものは冷蔵庫に。冷蔵庫では賞味期限を読み取り、期限切れの近いものを冷蔵庫が知らせてくれたり、現在あるものでレシピを検索、表示してくれるようになるやもしれません。洋服の洗濯表示にメモリを埋め込めば、洗濯機が汚れ物を色落ちするしないはもちろん、洗い方まで洗濯機側で自動選別できますし、持ち物すべてにメモリが入ることにより、自分の持ち物ですよ-と住所や電話番をイニシャライズしてあげると、落としものをしたとしても、拾われた交番側でメモリを読み取ってもらえば、遺失物届けを出さなくても自分の元に『落とし物ですよ』と交番から連絡をもらうこともできるはずです。
考えれば考える程、すごいことですよね。ユビキタスおそるべし。
人間の想像できることは、全て可能なことだと言われています。現実に70年代にSF映画やドラマで想像されていたことはほぼ現実化しています。ロビンソン一家が使っていた携帯電話は現実化していますし、スペースオデッセイのカード電話はとうの昔に現実化し、今では携帯の出現により陳腐化すらしています。
10年後『ユビキタスコンピューティング』という言葉が陳腐化した未来では、人間はどんな夢をみているのでしょうか?


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