□Swingin'sister is cemical sister/2001.11.9/DR.COBA

占い師といえども到底「占えない」森羅万象を書き散らかすこのコラム、いよいよ 始まってしまった。ナノのページにバカ注入。皆さんおそらく違和感抱いてると思うが、バカぐらい人の心を癒し、和をもたらすものはこの世にない。笑いの前で武器は 無力。「ビンラディン、極東のサイト見て考え改める!」という大見出しが東スポ一 面に躍る日まで頑張ってみよう。
第一回目の「占えない」はズバリ「水森亜土」。単なる唄のおねえさんではなく、 「歌いながら」しかも「両手で」グラフィックパフォーマンスを展開する、あの3チャンネルのスゥィンギン・シスター「アドたん」である。俺の記憶だとかれこれ25年前 ぐらいから見てたから、ウォールペインティングでいえばバスキアやキース・ヘリングよりもキャリアが長いことになる。一体今は何歳で、どんな風体になっているのだ ろう。まだあのテンションを維持してパフォーマンスを続けているのだろうか?まっ たくもって占えない。 が、最近その謎がイッキに解けた。知人が参加するギャラリーがPARCOで開催され るおりに、かの「アドたん」がレセプションパーティーに呼ばれ、なんとそこで当時 のパフォーマンスを展開するとのこと。これを見逃したら永遠に観れない確率のほう が高い。小さんの落語のようなものだ。さっそくHexagonの平沼氏を誘ったところ、
平:「マジで?行く行く。でもあの人、ウチの実家のすぐそばに住んでるからたまに コンビニで見るよ」
コ:「うそ!それでどうなの?やっぱ当時のまんま?」
平:「顔が怖いよ」
ショッキングな返答に不安感を煽られつつ、当日を迎えることとなった。レセプション会場であるPARCO PART1のカフェは超満員。そして一段高くなった壇上に、彼女はいた!オーバーオールである。アニメのような声である。そして顔は、 多少の年輪を感じこそすれ(多少森光子入ってた)、充分に肌のツヤもあり、若い! 怖くない!ああ、正真正銘アドたんだ!とひとしきり感激してパフォーマンスを見入 る。極太マジックとラッカーを駆使し、なつかしいあのタッチで猫やら象やらボードに描きまくる。そしてなんと、アラレちゃんのおわりの唄が炸裂。そういえば、あれっ てアドたんが歌っていたのだ。公園通りに「♪ぺンギンむ〜らか〜らおはこんばんち〜わ♪」とこだました。はっきりいって一生ナマで聞ける唄じゃないと思っていたの で感無量である。 だが、妙な違和感も同時に感じていた。一曲終わるごとの歓声は凄いのだが、ライブ中は水を打ったように静かである。しかも亜土たんのテンションが徐々にヒートアップするにつれ、その現象は顕著になっていく。アドたんが僕らをおいてどんどん高み に上っていってしまうような感覚。しかし、そんな訝しさも曲間のアドたんのMCで イッキに氷解する。
アド「あのねー、ステージに近いみんなはわかると思うけどねー、すごくラッカーの ニオイがしてきたでしょー。アドたんもねー、いつも描いてるとねー、キモチよくなっ てきちゃうの」
会場がどっと沸いた。そして目からウロコが落ちた。そう、アドたんはラリってい たのである。ボブ・マーリィですら静止画(ジャケ写)での吸引画像だったのに対し、 アドたんは動画、しかも国営放送で昭和の時代からトんでいたのである。子供相手に ケミカルで。「トゥックトゥックふふー♪」などと言いながら画を書いていたのも、 すべてうなずけるではないか。 それ以降、会場もすべてを納得したらしい。テンションの違いに迷うこともなく、 一体感をもってパフォーマンスは幕を閉じた。あとから聞いたら、御年67、8ということだ。そうは見えない。素晴らしいの一言に尽きる。
「塗装職人は短命」という俗説を見事に打ち砕いたアドたんが、渋谷を確実にジャックした夜だった――。


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